皮膚はいかに重要か(3)「外用剤は塗り方一つ」

皮膚はいかに重要か(3)「外用剤は塗り方一つ」

前田 学(八幡病院皮膚科部長)

皮膚科領域では各種の外用剤を多用します。こうした外用剤なしでは皮膚科の治療は成り立たないほど、極めて重要で、かつ有効・有用な薬剤なのです。ただし、その塗り方が問題なのです。外用剤は正しく塗って初めてその効果が表れます。代表的な外用剤はコルチコステロイド外用剤(ステロイド外用剤)です。かつて、アトピー性皮膚炎に有害な薬剤としてバッシングされ、週刊誌でも何度も取り上げられました。その結果、ステロイド外用剤を拒否して民間療法に頼り、死亡した例も報告されています。

ステロイド剤は切れ味の良さ、効果の高さなど極めて有用かつ有効な治療薬の一つで、この外用剤なくして皮膚科の治療はできないといって過言ではないでしょう。ただし、こうした利益とうらはらに弱点や欠点もあるのが世の常です。この外用剤にも強弱5段階に分類されています。古くから最も多用されているリンデロン軟膏は中間に位置し、デルモベート軟膏が最強です。皮膚からの吸収率が大人と子供、老人によっても異なり、部位差もありますので、適所適材の外用剤を選択することが極めて重要です。

たとえ話をしましょう。雀を撃ち落とすにはパチンコや空気銃で十分です。もちろん、ライフル銃や機関銃でも撃ち落とせますが、強力すぎて、雀は跡形もなくなってしまうでしょう。短期間、たとえば数日以内なら強力なステロイド剤を使用しても何ら問題ありません。問題は長期間だらだら漫然と使用すると副作用を起こすことがあります。その副作用には細菌や真菌、ウイルスによる局所感染や顔面の酒さ様皮膚炎や口囲皮膚炎などがあげられます。だからといって外用を恐れる必要性は全くありません。十分に留意すれば何ら問題がないのです。ステロイド外用剤の使用方法について、そのノウハウとコツを以下にご紹介しましょう。

皮膚面に薄く広い範囲に外用せずにトーストに塗るバターと同じようにある程度の厚みをもってたっぷりと塗ってください。手指の一関節の長さは約1センチメートルですので、チューブからこの長さを出して両手に広げると最適な量になります。これを専門的にワン・フィンガー・ユニットと呼びます。具体的にはティッシュ・ペーパーをその上に乗せてずり落ちない程度の粘り気さが理想です。ですから5グラムチューブ1本でも胴体半分程度しか塗れません。しっかりと外用して、アレルギーの火元を完全に消し、消失後も火種はその皮膚面の奥に残っていますから、保湿剤を主とし、定期的にステロイド剤の外用も続けてください。

参考:前田学著「元気な皮膚のつくり方」(オカムラ(有)、東京、ISBN: 9784990424008)

2017年4月15日